不思議の国のアリスから学ぶ英語表現

『不思議の国のアリス』に学ぶ、ビジネスストーリー構成と実務で使える英語表現

――プレゼン・企画書・ブログを「物語」に変えるためのフレームワーク――

英語を「学ぶための科目」ではなく、「武器として使えるスキル」に変えたい――そう考えたことはありませんか。TOEIC のスコアは上がってきたものの、会議で意見を言うときや、企画書のタイトルを英語でつけるときに、しっくりくる表現が出てこない。ビジネス英語を勉強しているのに、「実務で使える言い回し」と「人の心に残るストーリー」がうまく結びつかない。多くのビジネスパーソンが、このギャップに悩んでいます。

本記事では、『不思議の国のアリス(Alice’s Adventures in Wonderland)』という一見ビジネスとは縁遠い物語を、「ビジネスストーリーテリングの型」と「実務で使える英語表現」の両方を学べる教材として再構成します。プロジェクトの立ち上げ、社内調整、変革への抵抗、学びの振り返りといったビジネスシーンを、アリスの物語の構造に当てはめながら、「status quo」「take the leap」「navigate uncertainty」など、そのままプレゼン資料やミーティングで使える英語フレーズもあわせて紹介します。

単に物語を紹介するだけでなく、あなた自身のキャリアやプロジェクトを語るためのテンプレートとして使えるように設計しています。ビジネス英語を武器に変えたい方、ストーリーで伝える力を高めたい方は、ぜひ自分の仕事に当てはめながら読み進めてみてください。

1. なぜビジネスに「物語の構造」が必要なのか

仕事の場では、資料も会議もメールも「情報」が溢れていますが、多くが記憶に残りません。
一方で、小説や映画のストーリーは、細部は忘れても「流れ」だけは覚えていることが多いはずです。

これは、人間の脳が「ストーリー構造」で情報を理解・保存するようにできているからです。
だからこそ、ビジネスで伝えたい内容も、「物語の骨格」に乗せると、相手の記憶に残りやすくなります。

『不思議の国のアリス』(Alice’s Adventures in Wonderland)は、ビジネスストーリーに転用しやすい、非常にわかりやすい構造を持っています。
ここでは、その骨格をビジネス用テンプレートとして再構成し、さらにビジネスマンが実務で使える英語表現も合わせて紹介します。

2. 全体構造のイメージとキーワード(英語表現の地図)

アリスの物語は、ビジネス的に言い換えると、次の流れになります。

「退屈な日常の現状(status quo)」
「小さな違和感・兆候(early warning sign)」
「飛び込む決断(take the leap)」
「カオスな探索(navigate uncertainty)」
「理不尽な抵抗との対峙(face resistance)」
「学びを統合して日常に戻る(turn insight into action)」

この流れを頭に入れたうえで、一章ずつ「ストーリー構造」と「使える英語表現」を組み合わせていきます。

3. 第1章:退屈な日常 ― 現状の世界を描く

アリスは、退屈な午後から物語を始めます。ビジネスでは「一見回っているが、どこか停滞している現状」です。

ここで使える英語表現は「status quo」と「business as usual」です。
status quo は「現状維持」、business as usual は「いつも通りの仕事」というニュアンスです。

プレゼンやブログなら、次のように書けます。
「At first glance, everything looked like business as usual. Our team was maintaining the status quo, but a quiet sense of stagnation was spreading in the background.」

日本語にすると、「一見すると、すべてはいつも通りに見えました。チームは現状を維持していましたが、水面下では静かな停滞感が広がっていました」といった意味になります。

ここでのポイントは、現状を数字や事実だけでなく、「空気感」も含めて描くことです。
現状をあいまいにすると、その後の変化の必然性が弱くなります。
逆に、現状をクリアに描ければ、その時点で読者は自分の職場や人生に重ねて読み始めます。

4. 第2章:白ウサギの登場 ― 小さな違和感・シグナル

アリスにとっての白ウサギは、「あれ?」と思わせる存在です。
ビジネスでは、売上の微妙な変化、クレーム、競合の新サービス、内部の不満などが相当します。

ここで使える英語表現は「early warning sign」と「pain point」です。
early warning sign は「初期の警告サイン」、pain point は「顧客や社内の痛み・不満のポイント」です。

たとえば、ブログや企画書には次のように書けます。
「Over time, a series of small numbers started to feel like an early warning sign. Customer feedback revealed hidden pain points that we could no longer ignore.」

小さなサインを「大げさに騒ぐ」のではなく、「静かな違和感」として描くことで、その後の行動の説得力が増します。
ここを曖昧にすると、「なぜこのプロジェクトを始めたのか」がぼやけ、聞き手の納得感が下がるリスクがあります。
逆に、この部分を丁寧に描ければ、読者は「自分にも似たサインがないか」を考え始めるという機会が生まれます。

5. 第3章:追いかける決断 ― 飛び込む勇気

アリスは白ウサギを追いかけ、穴に飛び込みます。
ビジネスでは、新規事業への参入、部署をまたぐ改革、長年のルールを見直す決断などがここに当たります。

ここで使える英語表現は「take the leap」と「step out of our comfort zone」です。
take the leap は「思い切って飛び込む」、comfort zone は「居心地の良い領域」です。

プレゼンの導入であれば、こう書けます。
「Instead of ignoring the sign, we decided to take the leap. It was the moment we stepped out of our comfort zone and committed to real change.」

このパートは、リスクとリターンをセットで描くことが重要です。
現状維持のリスク、新たな挑戦のリスク、そのどちらを選ぶかという意思決定の構造を言語化することで、読者は「自分ならどうするか」を考えられるようになります。

6. 第4章:穴に落ちる体験 ― カオスと不確実性

長い穴を落ちていくアリスは、「何が起こるか分からない世界」に入ります。
ビジネスでは、計画通りに行かない立ち上げフェーズ、前提が次々に覆る時期です。

ここで使える英語表現は「navigate uncertainty」と「trial and error」です。
navigate uncertainty は「不確実性の中を進む」、trial and error は「試行錯誤」です。

企画書やレポートには、次のように書けます。
「From that moment on, our daily work was all about navigating uncertainty. Through constant trial and error, we started to test new hypotheses in the market.」

このフェーズを美談にし過ぎると、「現場のしんどさ」が伝わらず、リアリティが失われるリスクがあります。
混乱、失敗、やり直しを正直に描きつつ、「それでも続けた理由」を示すことで、読者にとっての「勇気」に変わります。

7. 第5章:サイズの変化 ― 役割と視点の変化

アリスの体が大きくなったり小さくなったりする場面は、「自己のスケール感の変化」を象徴しています。
ビジネスでは、現場視点と経営視点の行き来、個人としての視点と組織全体としての視点の切り替えです。

ここでのキーワードは「zoom in / zoom out」と「change of perspective」です。
zoom in は「細部に寄る」、zoom out は「全体を見る」、change of perspective は「視点の変化」です。

ブログなら、たとえば次のように書けます。
「To move the project forward, we had to constantly zoom in and zoom out. Sometimes we focused on the smallest operational details, and at other times we changed our perspective to see the business as a whole. It felt just like Alice, growing and shrinking in a strange new world.」

この章では、「自分の強みが通用しない感覚」と、「新しい視点を獲得していく過程」を描くと、読者は自分の成長と重ね合わせやすくなります。
リスクは、「なんでも屋」「便利屋」的に読まれてしまうことです。
そのため、「どの視点をいつ使い分けたのか」を論理的に示すことで、ストーリーに戦略性が生まれます。

8. 第6章:奇妙な住人たち ― ステークホルダーとの対話

アリスが出会う登場人物たちは、それぞれ別の論理で動いています。
ビジネスでは、部署や立場ごとに価値観が違うステークホルダーたちに対応します。

ここで押さえたい英語表現は「stakeholder」と「speak the same language」です。
stakeholder は「利害関係者」、speak the same language は「同じ前提・言語で話す」という比喩表現です。

ビジネスブログでは次のように書けます。
「Each stakeholder had a different priority, and at first, no one seemed to speak the same language. Sales focused on short-term revenue, finance emphasized cost control, and legal worried about potential risks. It truly felt like a modern version of Wonderland.」

このパートでは、「誰が悪いか」を探すのではなく、「前提が違うから噛み合わない」という構造を見せることが重要です。
機会としては、「翻訳者」としての自分の役割を打ち出せる点があります。
異なるステークホルダーの言語をつなぐ役割を引き受けることは、ビジネスマンとしての市場価値を大きく高めます。

9. 第7章:終わらないお茶会 ― 非合理な慣習との出会い

止まった時間の中で続くお茶会は、「目的を失った儀式」の象徴です。
ビジネスでは、意味を失った定例会議、誰も読まない報告書、惰性で続くルールに当たります。

ここで使える英語表現は「meaningless routine」と「legacy process」です。
meaningless routine は「意味のないルーティン」、legacy process は「古いまま残っているプロセス」です。

文章としては、次のように書けます。
「As we looked closer, we realized that some of our meetings had turned into a meaningless routine. They were legacy processes that nobody questioned, simply because they had ‘always been there’.」

ここでは、批判だけで終わらせると、「愚痴」で終わるリスクがあります。
非合理さを可視化したうえで、「なぜ残ってしまうのか」「どう変えればよいか」という建設的な提案へつなげると、記事やプレゼンの価値が高まります。

10. 第8章:ハートの女王 ― 最大の抵抗と権威

ハートの女王は、「理不尽な権威」の象徴です。
ビジネスでは、「暗黙のタブー」「社内政治」「『前例がない』の一言で止まる意思決定」などです。

ここで役立つ英語表現は「unspoken rule」と「resistance to change」です。
unspoken rule は「暗黙のルール」、resistance to change は「変化への抵抗」です。

たとえば、レポートには次のように書けます。
「The biggest challenge was not our competitors, but the unspoken rules inside the organization. We faced strong resistance to change, often summarized by a single phrase: ‘We’ve never done it that way before.’」

この章では、敵を個人にせず、「構造としての抵抗」として描くことが重要です。
個人攻撃のニュアンスを避けつつ、「何が変化を止めるのか」という本質的な問いを提起できます。

11. 第9章:裁判 ― 歪んだ意思決定プロセス

タルト泥棒の裁判は、プロセスも証拠もめちゃくちゃです。
これは、「結論ありきの会議」や「データ無視の意思決定」の比喩として活用できます。

ここでのキーワードは「decision-making process」と「data-driven」と「bias」です。
decision-making process は「意思決定プロセス」、data-driven は「データに基づく」、bias は「偏り・バイアス」です。

文章の例を挙げると、次のようになります。
「We realized that our decision-making process was not truly data-driven. In many cases, the conclusion came first, and the data was selected later to justify it. Hidden bias shaped the discussion more than objective facts.」

リスクは、この部分を過度に批判的に書きすぎると、読者が防御的になることです。
機会としては、「どうあるべきか」の提案をセットで示すことで、建設的な問題提起になります。
たとえば、「透明なプロセス」「前提の言語化」「少数意見の扱い」などを示せば、読者の職場にも応用しやすくなります。

12. 第10章:目覚め ― 学びの統合と新しい日常

アリスは目を覚まし、「何も変わっていないようでいて、自分の内側は変わっている状態」になります。
ビジネスでは、「プロジェクトがひと段落し、日常に戻るが、考え方と仕組みが変わった状態」です。

ここで使える英語表現は「lessons learned」と「new normal」です。
lessons learned は「得られた教訓」、new normal は「新しい当たり前」です。

ブログの締めとして、次のようにまとめられます。
「When the project cycle ended, the office looked exactly the same as before. However, our mindset had completely changed. These lessons learned became our new normal, shaping how we make decisions and how we serve our customers today.」

ここでは、「何が変わったのか」を抽象度を上げて整理することが重要です。
単なる成功自慢ではなく、「読者も自分の現場に持ち帰れる原則」として提示することで、ストーリーは他者にとっての価値に変わります。

13. 第11章:教訓の抽象化 ― 再現性のあるフレームへ

アリスの体験をビジネスに転用するうえで、最後に押さえたいのが「抽象化」です。
一つのプロジェクトの話を、「どの現場でも使えるフレーム」に変換します。

ここで役立つ英語表現は「framework」と「principle」と「apply to other cases」です。
framework は「枠組み」、principle は「原則」、apply to other cases は「他のケースにも当てはめる」です。

たとえば、ブログのまとめとして次のように書けます。
「In the end, our experience was not just a one-time story, but a framework. The key principles we discovered can apply to other cases: notice early warning signs, question legacy processes, and make decision-making more transparent.」

このように、具体から抽象へと一度引き上げることで、読者は「自分のケースに当てはめる」ことができるようになります。
ここを曖昧にすると、「読んで終わり」の記事になり、行動にはつながりません。

14. 第12章:読者への問いかけ ― 行動へのブリッジ

最後に、アリスのように「あなたならどうする?」という余白を残します。
これは、読者の行動を引き出すための重要なパートです。

ここで使える英語表現は「call to action」と「next step」です。
call to action は「行動を促す呼びかけ」、next step は「次の一歩」です。

締めくくりとして、次のように書くことができます。
「The real value of this story depends on your next step. What is the ‘white rabbit’ in your own business? What early warning signs are you ignoring? Today might be the best moment to take the leap and redesign your own Wonderland.」

日本語と英語を組み合わせることで、読者は「意味」と「実務で使える表現」を同時に学べます。
英語フレーズは、プレゼンのタイトルやスライドの小見出し、社内資料のキーワードとしてそのまま転用できます。

15. このテンプレートの活用と、リスク・機会の整理

この「アリス型ストーリー構造」は、ブログ記事、社内報告、プロジェクトの振り返り、キャリアの棚卸しなど、さまざまな場面で使えます。

主なリスクは三つあります。
一つ目は、物語の比喩だけが強くなり、ビジネスとしての具体性が薄くなることです。
二つ目は、感情的な愚痴で終わってしまい、「教訓」や「原則」が抽象化されないことです。
三つ目は、英語表現が「かっこいい言葉の羅列」になり、実際の会議や資料で使われないことです。

一方で、機会も明確です。
経験を構造化することで、自分の思考が整理され、「再現性のある学び」になります。
英語表現とセットで扱うことで、グローバル企業や外資系とのコミュニケーションにも直接応用できます。
さらに、ブログやSNSで発信する際、「ストーリー×英語フレーズ」という差別化要素を持てる点も大きな機会です。

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この記事を書いた人 Wrote this article

パト

30代サラリーマンの「ぱと」と申します。 日系大手メーカーや外資系企業を経て、現在はブログでおすすめの本や、人生の哲学などを発信していきます。 よろしくお願いいたします。

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